「特定技能」で80万人超、外国人労働者拡大へ 全業界で想定以上

人手不足の分野で外国人労働者を受け入れる在留資格「特定技能」について、政府は18日、今後5年間の受け入れ見込み数の枠を、82万人とする方針を自民党に示した。2019年の制度導入時には、24年までの5年間で約34・5万人と設定したが、その2・4倍にあたる。国内の人手不足を補うため、外国人労働者の受け入れを拡大する。

 特定技能には、一定の知識や経験が必要な1号と、熟練した技能が必要な2号がある。政府は飲食料品製造や介護、建設など1号の12分野に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野を追加する方針も示した。自民は近く了承する見通しで、政府は年度内に閣議決定する。

 特定技能の労働者は、生産性の向上や国内の労働者を確保するための取り組みをしてもなお、人手不足が解消できない分野に限り、受け入れを認める。受け入れが過大になり、雇用に悪影響を及ぼすことがないよう、分野別の受け入れ見込み数の枠を5年単位で設定している。

 出入国在留管理庁によると、19年の制度導入時には34万5150人としていたが、昨年末時点の在留者数は20万8462人。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外国人の入国を規制した「水際対策」の影響などで、受け入れは想定を下回ったが、直前の半年間で約2割増えている。

 人手不足は各業界に広がり、政府は昨年6月、2号の対象を2分野から11分野に拡大した。今国会では、国内で就労中、1号の水準に育成することを目的とする在留資格「育成就労」の創設を柱とする入管難民法などの改正案を提出している。

特定技能の外国人、5年で82万人に拡大 政府が閣議決定

政府は29日、「特定技能」外国人の受け入れ枠の上限数や分野の追加について閣議決定した。2024年度から5年間の上限をこれまでの2倍超となる82万人に設定し、新たに自動車運送業、鉄道など4分野を追加した。人手不足が深刻な多くの分野で特定技能が不可欠な存在になっている。

特定技能制度の運用に関する基本方針などを改定した。受け入れ上限の増加に伴い受け入れ企業の責務を明確にした。外国人の安定的な在留活動を確保するとともに、地域での外国人との共生社会の実現に寄与する責務があると示した。

政府は閣議に先立ち、首相官邸で外国人の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議を開いた。林芳正官房長官は企業の責務に関し「受け入れ見込み数の拡大に伴い地域住民が不安を抱く恐れなどが懸念されることを踏まえた」と説明した。

特定技能は人手不足分野に限り、一定の専門性を持つ外国人労働者を受け入れる制度として19年に始まった。23年末時点で20万人ほどいる。5年間ごとに受け入れ枠の上限を設定し、3月末で期限を迎える。

上限は業界ごとに成長率や5年後の需要などから不足人数をはじき、人材確保や生産性向上の努力で解決できる分を差し引いて算出した。

これまでの介護や飲食料品製造業などの12分野から4分野を追加して計16分野となる。新たに追加されるタクシーやバス、鉄道などの分野では受け入れ体制を整える必要がある。

運転手や車掌業務では安全管理やコミュニケーションで高い能力が必要となる。このため試験や研修などの充実で対応を図る。

バスやタクシーは事故発生時の対応や高齢者や車椅子の乗客への対応も試験項目にする。鉄道運転士などは専門用語や異常時の乗客アナウンス、指令員との連絡なども盛り込む。求める日本語能力も他の分野より厳しい日本語能力試験N3以上を求める。

試験に合格して入国後、必要になる免許の取得などのために最長1年間の研修期間を設ける。

介護や飲食料品製造業などの既存分野も大幅に受け入れ数が増える。19年当初に設定した人数と比べ、介護は6万人から13万5000人に、飲食料品製造業は3万4000人から13万9000人に受け入れ枠をそれぞれ拡大する。

今回の決定により、特定技能と非熟練労働者の技能実習の受け入れ分野がほぼそろった。例えば繊維工業はこれまでは技能実習しか認めていなかったが、追加されることになった。外国人労働者が特定技能に移行しやすくなった。

今後は各省庁で省令・告示の公布や試験作成などの作業に移る。技能実習から移行したり、海外で試験を受けて入ってきたりするなどの方法で準備が整い次第受け入れが始まる。